ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 個人的にいま一つ「?」が消えないのが、振り袖のレンタルなどを手がける「はれのひ」が起こしたトラブル。事前に支払いをさせておいて、成人式当日にはほぼ全店舗を突然閉鎖し、多くの新成人が振り袖の着付けを受けられなかった事件です。被害者のみなさんには同情いたします。

 驚くのは、20歳の女の子が50万とか100万とかいう大金を事前に払い込んで、当日になり泣きべそをかいているという事実。正直、なんでみんなそんなに金持ちなんだろうと思いました。

 そんな大金を、三越とか高島屋など信用のある大手百貨店ならまだしも(彼らは事前にそんな金額を要求しないと思いますが……)、一般的に有名ではなく、決算書すら見たことのない会社に対し、何の疑問も持たずにお金を払ってしまうという経済行為……。騙したほうが悪いに決まってますが、経済原理的には、騙されるほうもこれでは無防備だったと言えないでしょうか。私には、よほど目先の資金繰りに厳しいので事前に金が欲しいのだろうと映ります。

 少し前に格安旅行会社「てるみくらぶ」の倒産事件もありました。被害者にはもちろん同情しますが、10万も20 万もする海外旅行の予約を代行させて、事前決済までして、先方の財務状況を何一つ知らなかった……では、経済原理からすれば、騙されたほうも悪いと言えます。

 少なくとも私の感覚ではあり得ず、多少高くても信用力のあるJTBなどの大手旅行会社を使いますし、その意味では安い物には必ず安いだけの理由があります。年初からこの連載で申し上げている「本源的価値」を常に考える習慣をつけておけば、そういう事件には絶対にひっかかりません。それだけの現金を事前に払って手にするものは何か、ということをよく考えましょう。彼女らが被害者だ、ということに異存はありません。しかしこれらはごく初歩の経済原理を理解していれば防げたかもしれず、こういう“特殊犯罪”を防ぐために政府に取り締まりをさせることになれば、さらに税金が無駄に使われることになり、国民の利益にはなりません。

 特に事前にお金を支払う場合にはその相手の信用、払う内容について問題がないのか、事前にきちんとチェックする……それだけで防げることも多いのです。

AERA 2018年2月5日号

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