重要な役どころが次々に舞い込むのは、サラリーマンでもDV男でもサムライでも、“ごく当たり前の感覚”で演じ切ってしまう彼の底知れなさに、多くの監督が魅力を感じているからだろう。

「自分では、何か特別なことをしている感覚はないんですけどね。『何が普通か』という感覚には人それぞれ誤差があると思いますけど、誰だっていろんな側面をもっているのが『普通』でしょう? だから、役に自分を合わせるというよりも、自分の中にもともとある同じような部分を引き出していくというか……」

 プライベートも気取らない。食べ物も洋服も、高級なものには興味がない。その代わり、ライダースジャケットやギターには惜しみなくつぎ込む。

 基準は、「自分が好きかどうか」だ。

「好きなものや好きな人は大切にしたいと思う。そのほうが、自分も気負わずにいられるしね」

 選択に迷いはない。だからどんな場所でも、フラットでいられるのだ。(ライター・澤田憲)

AERA 2018年2月5日号