わずか数年前にサーブを教えた少年・張本の急成長を、国内でほぼ無敵を誇ってきた水谷は脅威に感じている。一方で、うれしさもこみ上げている。

 リオ五輪の団体で銀メダルを獲得した後、水谷はこんな思いを吐露していた。

「もっともっと、僕を脅かす存在がたくさん出てきてほしい」 

 張本の出現で、その願いがかなったのだ。

 全日本選手権で敗れた日の夜、水谷は自身のツイッターに、こんな決意表明をした。

「俺はこんなとこでくたばりません。必ず這い上がるので引き続き応援していただけたら嬉しいです」

 エースのプライドに、火がついた。

 張本は逆境を跳ね返す水谷の姿に、憧れてきた。かつてのインタビューでこんな話をしていた。

「どんなに苦しいラリーになっても、必ず盛り返す。そんな水谷さんの姿は、本当にかっこいい」

 全日本王者になっても、その思いは変わらない。

 2年半後の東京五輪。日本卓球界初の金メダル獲得に向け、二人のライバル物語は続く。(朝日新聞スポーツ部・前田大輔)

AERA 2018年2月5日号