イスクラ産業が開発したイヌ・ネコ専用の漢方処方。用途別に13種類を販売している(撮影/大野洋介)
イスクラ産業が開発したイヌ・ネコ専用の漢方処方。用途別に13種類を販売している(撮影/大野洋介)

 お灸や鍼などネコの世界でも東洋医学が注目を集め始めている。漢方薬の投薬ではイヌの倍効き、1週間ぐらいで改善を実感する飼い主が多いとの情報も。ただ、漢方薬の投薬に関しては「西洋医学と東洋医学の単純なミックスにはリスクもあるのでは」との指摘もある。

 ネコの腎不全特効薬を開発中の東京大学大学院の宮崎徹教授(疾患生命科学)は「漢方薬は中国で何千年間も『治験されてきた薬』といってもよいわけで、その意味では『効く薬』しか残っていません。ただ東洋医学は、なぜ効くのか、というメカニズムを解明してきませんでした。ですから、ピンポイントで患部にアタックする西洋医学の治療薬と混合服用したとき、どのような作用を及ぼすのかわからない面もあります」と話す。

 これに対し、沢村獣医科病院統合医療センター(千葉市)の澤村めぐみ院長は「確かに、東洋医学は経験に左右される面が大きいのは否定できません。漢方薬の効能のメカニズムを探る研究職の方々と臨床医がうまく連携できればいいのですが……」との考えを示す。

 一方、「鍼・漢方」専門として開業した成城こばやし動物病院(東京都世田谷区)の鍼・漢方外来担当・山内明子獣医師は「イヌやネコの鍼灸治療は日々進化しています」と強調し、動物の鍼灸漢方治療の課題について、「日本にはヒト向けの鍼灸師の国家資格はありますが、イヌやネコの鍼灸に関しては教育機関はあるけれど資格制度はありません。獣医師同士の連携やより効果的な治療体制の確立のためにも統一した資格制度があれば、患者さんが鍼灸漢方治療を選択するときの安心や信頼の向上につながると思います」。

 日本でイヌ・ネコの鍼灸を学んだ後、フロリダに本拠地を持つ「Chi Institute」で獣医鍼灸師(CVA:Cirtified Veterinary Acupuncturist)の資格を取得した山内さんは、こんなアドバイスも。

「最近は、動物の漢方やマッサージやお灸についてネットで容易に検索でき、セミナーなども多く開催されているようです。東洋医学では、年齢や病名だけで判断するのではなく季節や環境も考慮し、その時々に、それぞれの体質に合ったケアをしないと逆効果になることがあります。気になることがあれば、鍼灸治療や漢方薬を取り入れている動物病院にご相談されることをお勧めします」

※「NyaERA またたび」から再掲

AERA 2018年1月29日号より抜粋