【Ujoh】西崎暢さん(39)/1978年生まれ。ヨウジヤマモトのパタンナーを7年務めた後、2009年にUjohを設立。美しいテーラリングとカッティングが特徴だ(撮影/写真部・加藤夏子)
【Ujoh】西崎暢さん(39)/1978年生まれ。ヨウジヤマモトのパタンナーを7年務めた後、2009年にUjohを設立。美しいテーラリングとカッティングが特徴だ(撮影/写真部・加藤夏子)
写真=Ujoh提供
写真=Ujoh提供

 埼玉県内にあるアトリエではいつも、7メートルほど離れた位置から洋服の見え方を細かくチェックする。Ujoh(ウジョー)のデザイナー、西崎暢(みつる=39)の習慣だ。

【ファッションショーの様子はこちら】

 Ujohを立ち上げる前の7年間、パタンナーとして働いたヨウジヤマモトで聞いたデザイナーの山本耀司(74)の言葉が、いまも耳に残る。

「距離があるところまで届くのが、デザインだ」

 西崎には、山本に学んだやり方が染みついている。

「例えば、交差点で信号待ちをしていた女性が歩き始めると、コートの裾がふわっと膨らむ。このラインをつくるには、どの素材を使ってどうパターンを引けば美しいか。勝負したい洋服の線が際立つように作ります」(西崎)

 建物を建てるかのように洋服を組み立てる。こだわっている生地の話になると、うれしそう。

「1980年代の耀司さんやステラ マッカートニーなども使った尾州の有名なウールの生地屋と、やっと取引ができた」

「尾州」はかつて尾張国(おわりのくに)と呼ばれた愛知県から、岐阜県にかけてのエリアで、伝統的な織物の産地だ。

 西崎の話に出てきた80年代、日本には山本耀司のみならず、世界を舞台に活躍するファッションデザイナーが少なからずいた。イッセイ ミヤケの三宅一生(79)、COMME des GARCONS(コム デ ギャルソン)の川久保玲(75)、ハナエ モリの森英恵(92)らがその代表格だ。

次のページ