「マイナス80度という条件下でも生き続けます。121度で20分、高温高圧をかければ死滅させられますが、日常ではまずそんな条件にはなりません」

 納豆菌の状態はざっと二つある。一つは熱などにも強い「無敵状態」の納豆菌で、芽胞と呼ばれ、かたい殻で覆われた胞子の状態。形は卵形だ。この状態の間はいわば休眠中で、栄養源がなくてもかなりの期間、生きていける。もう一つは棒状で栄養細胞と呼ばれる状態。温度が上がり栄養源がある環境になるとむくりと起きて、分裂し増殖を始める。そしてまた自分の身が危うくなると、細胞の中に胞子を作り、殻に閉じこもるのだ。乾燥したままどこかで眠っていた菌が、10年経ってからまた育つこともあるというから、さながらゾンビのようだ。

「さらに、納豆菌は自分を保護するためにポリグルタミン酸というネバネバを合成しますが、飢餓状態になったらそのネバネバを栄養源にして生命を維持します。粘りを合成する力もあるし、分解する力もあるんです」(田谷さん)

 自ら非常食を作って、それを食べて生き延びる。自炊スキルまで備えた納豆菌、恐るべし。

 もちろん健康効果もすごい。(編集部・高橋有紀)

AERA 2018年1月29日号より抜粋