腸を制することが健康を制する?(※写真はイメージ)
腸を制することが健康を制する?(※写真はイメージ)

 風邪からがんに至るまで、万病と関係が深く「第2の脳」ともいわれる腸。なんと生活習慣で制御できる臓器でもあるのだ。

 消化吸収、排泄をつかさどる臓器として知られる小腸や大腸が、脳と密接な関係を持ち、様々な病気や神経症状と深く関わっていることが明らかになってきた。そして、腸の働きを支配するのは、千種類を超えるとされる「腸内細菌」。善玉菌、悪玉菌、日和見菌のバランスが健やかに生きる要になるという。

「食べることも大事だけど、出すことが健康の基本。腸を制することが健康を制するのです」

 国立研究開発法人理化学研究所(理研)に特別研究室を持つ辨野義己農学博士(69)はそう断言する。地道なフィールドワークとサンプリング、培養でこれまでに69種類の新しい腸内細菌を発見して命名、現在も精力的に研究を続ける腸内細菌の世界的権威だ。

 最近よく「腸内フローラ(花畑)」という言葉を耳にする。小腸の終わりの回腸の部分から大腸にかけて、千種類以上6百兆個とも言われる様々な腸内細菌がそれぞれの種類ごとにびっしりと腸壁に群生している様子を見立てた造語で、腸内細菌叢とも呼ばれる。この花畑が、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌2、ウェルシュ菌や黄色ブドウ球菌などの悪玉菌1、大腸菌などの日和見菌7という割合になっているのが理想だという。なぜ腸内細菌のバランスが大事なのか。

 消化吸収の場である小腸は、病気の起こりにくい臓器だ。一方、ウンチを作りためておく大腸は、最も病気の起こりやすい臓器。大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎など病気の種類もあげればキリがない。

「なぜならそこに腸内細菌がいるからです。上からきた食べカスを有害物質や発がん促進物質に変えたり、細菌毒素を産生して直接大腸に障害を与えたりすることもある。血管を通った有害物質が肝臓がんの原因になることも最近分かり、肥満や糖尿病、自閉症やうつに関係することも分かってきた。大腸にいる腸内細菌が、あらゆる病気の発生源なのです」(辨野博士)

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