避難訓練終了後、参加者は文京シビックセンター地下の「区民広場」に集まり、内閣官房の担当者などからの話があった。内閣官房の担当者は参加への感謝を述べるとともに、避難訓練の目的をこう語った。

「訓練の目的は大きく二つ。一つは我が国にミサイルが飛来する可能性がある場合、どのような情報が届くかを確認してもらうこと。そしてもう一つは、Jアラートが鳴った場合にどのような行動をとるべきかを実地で体験、確認してもらうことです」

 参加者は東京都が準備した「お土産」を手に取り、会場を後にした。お土産の中身は、クラッカー、圧縮おしぼり、カイロ、携帯トイレ、ティッシュだった。

 避難訓練に参加した40代の会社員の女性はこう感想を話した。

「訓練だから避難行動に移ったが、実際はJアラートが鳴っても、すぐに避難に移れるかは疑問です。昨年、北朝鮮のミサイルが発射され北海道や東北地方などでJアラートが鳴ったが、現地では何も起こらず、緊迫感を感じない」

 確かに、政府が公表したインターネットの調査結果によれば、北朝鮮の弾道ミサイルが北海道上空を通過した昨年9月15日、Jアラートなどで発射情報を把握した住人のうち、実際に避難行動を取った人は5.6%に過ぎなかった。

 また、自営業の50代の男性は、

「やらないよりはやったほうがいいが、実際に北朝鮮がミサイルを発射すれば、皆パニックになり、今回のような冷静な避難行動をとれないのではないか」

 これは記者も気になった点だ。事前に参加者を決め、避難行動の事前指示があったにもかかわらず、今回の訓練で避難完了に約4分かかっている。実際は避難にどの程度の時間をかけられるのか。軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんはこう話す。

「北朝鮮が核弾道ミサイルを発射したら、7~10分で着弾します。昨年8月と9月に北海道上空を北朝鮮の弾道ミサイルが通過したときの対応では、発射からJアラートが出るまでに2~3分、Jアラートから避難に4~5分はかけられるようになっています」

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黒井さんが訓練は「無意味」ではないという理由