こんな光景に触れると、店にとってより、後継者はまず顧客のために必要だと痛感する。

 高崎以上に中心部の過疎化が止まらないのが茨城県水戸市だ。そこで洋食屋花きゃべつを父と営む嶋田淳さんにも話を聞いた。

 店は伯母がオーナーで、父が実質上の経営者。嶋田さんは1年少し前から店に入った。それまでは中央大学を出て、モスフードサービスに勤め、5年ほどエリアマネジャーをしていた。
「父の背中を見て育った影響か、自然と飲食関係に進んでいました。震災の影響もあって存続が厳しくなったビルの取り壊しで、閉店を検討したんですが、将来的には自分の店を持ちたかったので、絶好の機会かなと……。そこで新たに移転先を探し、よい物件も見つかりました」

 花きゃべつは水戸のオフィス街・南町にあり、周辺もランチ需要だけ見れば、むしろ店が足りないくらいという。だが、駅近や繁華街・大工町の寂れ具合は高崎の比ではない。

「北口のミナミ食堂や富士食堂などは安かったのでたまに行って、ラーメンを食べたりしましたね。むしろ、自分の店の周囲の喫茶店に行きつけがいくつかありましたが、かなり閉じました。(1999年3月の)県庁の移転が大打撃でした」

 と嶋田さん。「まだリニューアルした店も軌道に乗り切ってはいないが、落ち着いたら、地域の活性化についても、商店街の若手たちと真剣に考えていきたい」と抱負を語った。

 一方、栃木県の宇都宮は高崎と人口もほぼ同じ。絶メシ企画においてもリサーチ対象だったが、高崎の富岡賢治市長は「餃子はファストフードだから、観光客もあまりお金を落とさない」と見る。だが、高崎もパスタがソウルフードなのでそこは同じだろう。いわんや、絶メシも安ウマな店ばかりなので、いわば一日かけて巡るような仕掛けがさらに必要に思えた。

 宇都宮の場合、餃子食べ歩きツアーがはとバスなどのコースにも組み込まれ、観光客をうまく囲い込めてはいる。ツアー客はミールクーポンを渡され、宇都宮餃子会加盟店の餃子なら一通り食べられる、市中心部の来らっせ本店に寄るケースが多いようだ。

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