メニューは、魚と肉料理はどちらも一品ずつ、カクテルドリンクを含めメニューの97%が野菜でできている。センテーノさんの料理は、メキシコや地中海など多様な文化にインスパイアされており、メニューには舞茸や海苔、昆布など日本の食材も並ぶ。すべての料理において彼が最優先するのは、旬の食材の味を引き出すことだ。

 バーカウンター横の掲示板には、その時々で仕入れた旬の野菜が書かれている。記者が訪れた11月中旬は、ブロッコリーの一種のスピガレーロ、さつまいも、イチジクなど。料理には、果物もふんだんに使う。炭火で炙ったブドウは、ヤギのチーズとスピガレーロとともに、オレガノのドレッシングでつまむ。白ワインが飲みたくなる。

 運ばれてきた「シェフズサラダ」は、その豊かな彩りに思わず目を奪われた。ししとうやナス、フダンソウなど14種もの具材を使い、レモンドレッシングにくるみのペーストが添えてある。このサラダを食べた後は、その日一日健康的な食べ物しか口にしたくなくなるほど、ヘルシーな一皿。店内に女性客が圧倒的に多いのも納得できる。

 約10年前、センテーノさんが初めてレストランをオープンした当時は、小皿料理がトレンドだったと振り返る。

「味付けは酸味や辛味などフレーバーのお祭り。味覚を刺激されすぎたせいか、最近のロスは、シンプルな料理に立ち返る流れにある」(センテーノさん)

 彼の料理は、食材の味を引き立たせながらも「最初から一緒にあるはずだったと感じられるような組み合わせ」(同)だ。

 場所は、細かな装飾が美しい建物が立ち並ぶ、ダウンタウンのヒストリック・ディストリクト(歴史地区)。レストラン名のP.Y.T.は、マイケル・ジャクソンの名曲「プリティ・ヤング・シング」が由来かと思いきや、“プリティ・ヤング・ターニップ”の略。ターニップはカブのことで、お店のロゴにもなっている。店内の壁のほか、お店の外でピンクに光るネオンの赤カブが目印だ。

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