●「それはしんどかったね」相談員は驚いて言った

 アスペルガーは生まれつきの性質であり、基本的に「治癒」することはない。対症療法としては、パニックが起きないように環境調整をしたり、苦手な状況を回避したりする、人から誤解されたら、自分の話し方のチェックを心がける、など、素人でも分かりそうなことしかない。治療はできないが、パニックなどの症状回避のためには向精神薬の服薬は有効性がある。またアスペルガーはそれによる鬱、神経症、適応障害などの「二次障害」も生むので、服薬はその場合にも必要となる。

「言語性知能と動作性知能の差が40もあったの! それは生きるのがしんどかったね」

 私の話を聞いた相談員は、驚いてそう言った。

 それでも私は患者の中では、少しは幸福だったと言えるのだろう。少なくとも生まれつき障害があったのを、今まで感じることなく生きてこられたのだから。そして、昔だったら「異端者」と片づけられたかもしれないものが、実は「発達障害」なのだ、と認識される時代を生きることを許されているのだから。

 生きづらさを抱え、対人関係に苦慮しながらも、自分は非言語性学習障害やアスペルガーではないかと疑ったことのある人は、それほど多くないだろう。そういう人には、この発見されにくい、そして自覚されにくい障害があるかどうかをチェックするために、専門機関を訪れてみてほしい。私も自分の障害と向き合い、見たことや感じたことを書いて伝えることで、少しでもそうした人の力になれたらと思う。

AERA 2018年1月22日号