ファンテックは金融を変える?(AERA 2018年1月22日号より
ファンテックは金融を変える?(AERA 2018年1月22日号より

 日本の銀行業界を脅かす、金融とITを融合した「フィンテック」関連サービスが勢いを増している。楽天やGMOペイメントゲートウェイといったeコマースの運営会社による企業向け融資事業、中国アリババのスマホ決済などだ。銀行はどう対抗していくのか、最新動向を金融ジャーナリスト・浪川攻氏がレポートする。

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<押し寄せる“黒船決済集団”に対し、All Japan Banksで対抗>という文節を記して、みずほFGが昨年、他の銀行などに参加を呼びかけた構想がある。みずほ独自の電子マネー「Jコイン」構想である。みずほが配布した関連資料には<全邦銀が、発行する“All Japan 電子マネー”>とあり、三菱UFJFGの「MUFGコイン」など開発が進む電子マネーをJコインに<糾合>するとしている。

 その後はどうなったのか。みずほFGは2月にJコインの実証実験を開始するようだが、いまのところ、「All Japan」の輪に広がるムードはきわめて乏しい。むしろ、広がっているのは戸惑いである。実際、みずほが昨年秋になって他のメガバンクに呼びかけた協議会の設立も実現していない。

 それにもかかわらず、みずほの呼びかけは独り歩きして、国内外から「本当に全邦銀がJコインに大同団結するのか」という照会が寄せられている。金融当局などはその火消しに追われる始末なのだ。

「Jコイン構想は、MUFGコインのように最新のブロックチェーン技術を活用している仮想通貨ではなく、フィンテックというよりも、流通・小売業界が提供している従来型の電子マネーだが……」と、他の大手銀行の決済業務担当者は首をかしげる。流通・小売業からは「ポイントがない電子マネーと考えると、最終ユーザーの利用は期待しにくい」とすら評される。

 果たして、この電子マネーはAll Japanマネーに大化けするのかどうか。いまのところ、その結論は導き出せない。

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