切手趣味週間 「髪」小林古径(1969年)/浮世絵や日本画の名作を題材に年1回発行される人気シリーズ。額面の配置に注目(撮影/写真部・岸本絢)
切手趣味週間 「髪」小林古径(1969年)/浮世絵や日本画の名作を題材に年1回発行される人気シリーズ。額面の配置に注目(撮影/写真部・岸本絢)
世界的デザイナー、イルマ・ボームがデザインを手がけた切手。シートで見ても、1枚の切手として見ても、デザインとして完成されている(撮影/写真部・岸本絢)
世界的デザイナー、イルマ・ボームがデザインを手がけた切手。シートで見ても、1枚の切手として見ても、デザインとして完成されている(撮影/写真部・岸本絢)
タイポグラファーのヤン・ファン・クリンペンがデザインした数字の切手。1色でも魅力的な切手はある。守先さんお薦めのシリーズ(撮影/写真部・岸本絢)
タイポグラファーのヤン・ファン・クリンペンがデザインした数字の切手。1色でも魅力的な切手はある。守先さんお薦めのシリーズ(撮影/写真部・岸本絢)

「切手にはデザインと印刷技術の要素が詰まっている」と語る、ブックデザイナーの守先正さん。多摩美術大学でタイポグラフィーの講義も担当する守先さんに、切手デザインの魅力について聞いた。

【写真】世界的デザイナーが手がけた切手はこちら

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 切手を集めるようになったのは小学2年生の頃です。当時、第2次切手ブームが始まって、「ビードロを吹く娘」を切手雑誌の懸賞で当てたこともあります。

 切手デザインの面白さは、要素の何を省いて何を残すか、ということ。それから小さなスペースの中でのバランスです。たとえば大人になってから感心したのが、小林古径の「髪」を使った切手。数字の「15」を普通ここには置けないと思うんですよ。でも上にあげると人物のバランスとそぐわず、変な空間が空いてしまう。絶妙な位置にあるんです。アールデコっぽい丸い数字や文字もいい。近年は切手にも既製の書体が使われていますが、この頃は図案として手で描いたものです。

 1964年の東京オリンピックの記念切手もいいですよね。この頃のデザイナー(当時は郵政技官)ですが、本当に優秀だと思います。4、5人で手分けして絵も字も描いている。字もものすごくうまいです。

 同じデザインが複製されてたくさんあるのが好きなんです(笑)。今、ブックデザインの仕事をしていて、書店にデザインした本が並ぶのが嬉しいんですが、切手にルーツがあると思います。

 最近、気に入っているのはオランダの切手デザイン。世界的なデザイナー、イルマ・ボームが手がけた切手には、トリミングの仕方、色の使い方など、デザインの要素すべてが入っています。

 海外ではグラフィックデザインの年鑑に切手が載っているのに、日本では別のものとして扱っている。公共デザインである切手を正当に扱うべきではないでしょうか。

(ライター・矢内裕子)

AERA 2018年1月15日号より抜粋