神社の参道に並ぶ露店のように、烏森神社周辺には居酒屋が立ち並ぶ(撮影/写真部・小原雄輝)
神社の参道に並ぶ露店のように、烏森神社周辺には居酒屋が立ち並ぶ(撮影/写真部・小原雄輝)

 かしわ手を打つ乾いた音が静寂な境内に響く。サラリーマンの聖地、東京・新橋。飲食店が密集する路地奥にひっそりとたたずむのが烏森(からすもり)神社だ。平日の午後7時半。拝殿にひっきりなしにスーツ姿の男性が現れる。

「仕事の成功を祈りました」と話すのは、近くの商業施設「ギンザシックス」で働く36歳と29歳の男性2人組。

「神社を見かけたら毎回立ち寄ってお祈りしているんですよ。今も通りすがりに神社が見えたので入って頼んで、という感じです」

 所構わず参拝したくなる心理の背景には何があるのか。

「運命みたいなものを信じているので。商売には運も大事」

 スポーツ紙を脇に抱えた50代男性。祈りは数分間続いた。

「気持ちのリセットというか、自分と向き合う、という感じでしょうか。ここに来ると、すっとするんです」

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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