神棚を購入する若手経営者の傾向について、窪寺社長はこう解説した。

「経営が軌道に乗り一息つく頃に、何か足りないって思うみたいです」

「まさに僕はそのパターンです」と笑うのは、インターネット広告事業などを展開する「ミスターフュージョン」(東京都港区)の石嶋洋平社長(36)だ。

 09年の創業以来、7期連続増収増益を続ける同社。神棚設置のタイミングは、連続の増収増益が6期目にさしかかる約2年前だった。石嶋社長は言う。

「社長業って大変で孤独だし……。でも、困ったときに頼ったり、助けてほしかったりという感じでもないんです。ただ、神さまが見守ってくれている、という安心感が欲しいのかもしれません」

 石嶋社長はこう続けた。

「神棚があると、日本古来の文化を大事にしている企業だな、法令順守や規律もしっかりしているんだろうなというイメージにもつながります」

 神棚には古めかしいイメージもつきまとう。だが、最先端のITを扱う企業だからこそ、という面もあるのだという。

「IT企業に神棚があると、来客される方は一様に驚かれるんですが、そのギャップ、格好よくないですか? でも、実は根底でつながっていて、大事なのは時代や業種を超えた普遍的な価値。それはやっぱり、感謝の気持ちでしょう」(石嶋社長)

 対照的な若手経営者もいる。

インターネットメディアを運営するIT企業「リブセンス」(東京都品川区)。早稲田大学1年生のときに起業した村上太一社長(31)は神棚設置を検討したこともない。

「必要性を感じなかったというのが前提にありますが、これまでのオフィスに神棚を置けるスペースがなかったので」

 あえて周囲の縁起物を挙げれば、毎年年始めに母親が用意してくれる地元の寺のお札ぐらいだ。経営者としてのタフなメンタルはどう保つのか。

「物事を意思決定するときやかなえたい願いがあるとき、良い結果になると『思い込む』ことが大事だと思っています。ネガティブな意識は結末を悪い方向に導いてしまうので、何事もうまくいくとポジティブに考える習慣がついています」

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