神社本庁と、そこに所属する各神社のトラブルが近年急増している。有名神社が神社本庁を脱退するといった話は以前は滅多になかったことだが、21世紀に入って以降、数年に一度の割合で続発している。これをもって「神社本庁の強権体質が原因」「神社本庁が各地の神社に対する締め付けを強化している」などといった声も上がっているが、個々の事例を見てみると、“どっちもどっち”としか言いようのないケースも多い。

 例えば大分県宇佐市にある全国の八幡宮の「総本宮」、宇佐神宮。代々世襲で宮司が輩出してきた家柄の女性が後継を認められず、09年に神社本庁の意向で外部の人材が宮司になったことから、「神社本庁による乗っ取り」と一部メディアで騒がれた。しかし事情を知る関係者はこう語る。

「06年に当時の宮司が病気で引退したとき、神職の資格を取って間もない世襲家の女性が後継宮司になろうとしたのですが、神社本庁は神職としてのまともな経験がないことを理由に認めなかった。すると女性が神社本庁に対して訴訟を乱発し、話が決定的にこじれた。もう少し冷静に話し合いをするなどの選択はできなかったのかと思う」

 13年に神社本庁を離脱した梨木神社(京都市上京区)の理由は、境内に参道をふさぐような形でマンションを建てようとして神社本庁にとがめられたこと。04年には明治神宮(東京都渋谷区)が離脱して神社界を騒然とさせたが(10年に復帰)、これは当時、天皇、皇后“両陛下”が同神宮を訪問した際の案内状に“両殿下”というミスプリントがあり、神社本庁側が明治神宮宮司に進退伺の提出を求めたところ、「まるで“逆ギレ”したように離脱していった」(当時を知る関係者)という経緯がある。

 あるベテラン神主は、「神道人としてありえない態度の宮司が増えている。一方でそれをきちんと統率し、また話し合っていくという姿勢が神社本庁にも欠けている。いずれにしろ神道界全体のレベル低下が原因で、ここを根本的に改めないと騒動は今後も続発する」と語る。

 日本人の宗教離れが叫ばれるなか、神社界の先行きは決して明るくない。(文中敬称略)(「宗教問題」編集長・小川寛大氏)

AERA 2018年1月15日号より抜粋