そして忘れもしない、72年10月28日。カンカンとランランが来日した日、私はドラマのリハーサルがあったんですけれども、いても立ってもいられなくて抜け出し、上野動物園の裏口にお出迎えに行きました。今か、今かと待ちわびて、目の前を車が通ったときには思わず「いらっしゃーい」って、大きく手を振りました。そんな追っかけ、もちろん私ひとりだけでしたよ。

 ところがその1週間後、パンダが一般公開されるや事態は一変。びっくりしました! 日本中にパンダフィーバーが巻き起こり、上野の街もパンダ一色になりました。ぬいぐるみや商品がたちどころに並び、急場で作られたものも多かったので、尻尾が黒かったり、背中の柄が間違ったパンダもたくさんありましたね。

 でもまさか、ひとりひそかに研究していたものにこんなに光が当たるなんて。思ってもいなかったので嬉しかったぁ。始まりは戦前。小学校低学年のときですから。カメラマンの叔父がアメリカ土産にパンダのぬいぐるみを買ってきてくれたのが興味のきっかけとなりました。

 パンダは「生きたぬいぐるみ」って言われますけれど、本当にそう。頭が大きくて3頭身。ぬいぐるみと同じ黄金分割なんです。だから子どもから大人まで好きになる。とりわけシャンシャンはとびっきりの美人ですよ。目の周りのボサボサがカンカンにちょっと似ていて。

「パンダの顔はどれも一緒に見える」ってよく言われますけれど、ハンサムもいれば美人もいる。ポイントとなるのは、目の周りの黒い部分です。ランランはくっきりしていて涙形の、寄り目。優しい感じが好きという人もいましたけれど、私はカンカンの顔のほうがタイプ。離れ目で、黒い部分がボサボサしていて、なだらかなカーブを描いていました。あどけないの。

 パンダは賢くて、遊び心いっぱいで、平和的なところが私は好き。だって、かわいいんですもの。何をしていてもかわいい動物はほかにはいないですよね。シャンシャンの、あのあどけなさったら、たまらないでしょう?(談)

AERA 2018年1月1-8日合併号