豊田:あると思います。そのためには、電子カルテの標準化をやらないといけなくて、課題は2点あります。ひとつは用語の統一。同じ腕のしびれでも医師によって「ピリピリ」と「ビリビリ」と表現が違うのが現状です。極端な話ですが、症状はチェックボックスからの選択式にするなど、言語の統一をしたほうがいいと考えています。もうひとつは、患者から情報を引き出す医師の診療技術が、医師ごとにばらついていることです。

 今は医療関係者しか電子カルテを見られませんが、今後は患者も見られるようにして、医師と患者のコミュニケーションプラットフォームになる必要があると思っています。より深い情報を患者と医師が共有し、良い治療ができるようにするんです。「こういう医療をしたいから、こういうデータをこう取る」という医療のデザインが今後重要になっていくでしょう。

 今の医療は、(客観的な評価のための)数値化ができない、定性的なものがすごく多いんです。

島原:多いですね。画像はその最たるものでした。そこでコンピューターの力を借りて、客観的に評価ができるようにしていこうとしています。

豊田:今後は、画像検査にしても医師が見る検査結果は画像じゃないかもしれない。「ここにこういう腫瘍があります」という結果だけが出てくる可能性がありますね。

島原:いま海外では医療画像をクラウド上に収集する会社ができています。標準化されたデータを蓄積することで、活用しやすくする。20~30年後に使えるデータがたまるとさらにAIが生かされると思います。

豊田:今後20~30年で医師の役割は大きく変わります。専門的な知識をコンピューターに置き換えることで、医師はもっと患者に寄り添う存在になっていくと思うんです。まずはAIを使うなどして、効率化できるところは効率化する。コンピューターが手術をするのはまだ難しいけれど進歩するでしょう。でも人の幸せに関わることはAIには決められない。そこは医師が人間として力を発揮するところです。

(構成/編集部・長倉克枝)

AERA 2018年1月1-8日合併号