あんの・みつまさ/1926年、島根県津和野町生まれ。画家、絵本作家。山口師範学校研究科修了後、約10年間小学校で教鞭をとる。88年に紫綬褒章、2008年に菊池寛賞、12年に文化功労者に選ばれる。著書に『ふしぎなえ』『旅の絵本』など多数(撮影/岸本絢)
あんの・みつまさ/1926年、島根県津和野町生まれ。画家、絵本作家。山口師範学校研究科修了後、約10年間小学校で教鞭をとる。88年に紫綬褒章、2008年に菊池寛賞、12年に文化功労者に選ばれる。著書に『ふしぎなえ』『旅の絵本』など多数(撮影/岸本絢)

 画家、絵本作家の安野光雅さんが手掛けた『鶴亀高校 つるかめざんの歌 校歌より』(岩崎書店)。もしも動物たちの学校があって、校歌を歌ったら……。安野さんが想像をふくらませて作った空想の校歌の詞に、絵を描き下ろした一冊だ。著者である安野さんがAERAのインタビューに答えた。

*  *  *

 初夢で、もしもあなたが鮭となり、石狩川を遡っていたとする。鮭に生まれて悔いはない。でも鮭とはいえ、もう少しベンキョウしたかったと思ったとき、寮歌が響く。

「なつかしき川 石狩の
 連なる山に 雪降れば
 われらは向かう 岩の道
 あの流れこそ 故郷なれ」

 鮭冥利に尽きるなあ。頑張って産卵するぞ。

「いざ帰りなん 故郷へ
 よし塩鮭と はてるとも
 わが運命を 誇るべし
 ああわれら 鮭学部」

 作詞者は安野光雅画伯。「北海道水産大学鮭学部学生寮」の寮歌である。もちろんそんな学部、寮歌はない。ホタル、ヒキガエル、平家蟹、たこ、スッポン、オオカミ、山椒魚、河童らの学校も空想、校歌をつくり、素敵な絵を描き下ろした。こうしてできたのが校歌(画)集『鶴亀高校
 つるかめざんの歌 校歌より』である。

「いろいろ嘘の校歌を作ってきたんですよ。そのうち、土方歳三の故郷の町の小学校から校歌を作ってほしいといわれた。本当のは作らないと言ったけど粘られて。NHK『みんなのうた』にどうかという話もあったんですよ」

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