ある日、「まめネット」を運営するNPOしまね医療情報ネットワーク協会あてに1通の手紙が届いた。ダウン症心臓病を抱える娘を持つ母親からで、「県内で診療情報が共有されてうれしい」という感謝の言葉が記されていた。家族が老齢化して娘の面倒を見られなくなった後でも安心できるという内容だった。手紙を読んだ室脇さんは、「未来への安心につながっていることを知り、そういった方がいらっしゃることを忘れずに『まめネット』の必要性を理解して頂けるように力になりたい」

 現在のカード発行枚数は4万2千枚。県民の約6%になる。参加病院数も伸び続けて、特に訪問看護ステーションでの利用が増えた。チーム医療を支える仕組みとして着実に地域に浸透している。

「ICT企業なんですが、ITありきでサービスを考えるというより、地域の課題を解決するモデルをつくりたい。それを支える仕組みづくりで初めてITが必要になるのだと思っています」(室脇さん)

(編集部・柳堀栄子)

AERA 2018年1月1-8日合併号より抜粋