政党や後援会組織に頼る従来型の選挙は、組織力と資金力で勝負する。選挙通によると、事前運動を含め、選挙でカネがかかるのは人件費だという。戦術指導や書類作り、ポスター貼りも業者がやるケースが少なくない。人を雇えば誰かがカネを払う。カネを当てにせず集まる人でやる選挙は安くて強い。今回はあまりにも時間がなかったが、公示日にほぼ無名だった私が6万票を超える票を得たことは「市民選挙」の強さの証明だと思う。

 人件費ゼロの選挙で、かかった費用は供託金を除いて200万円ほど。うち120万円は、本来は公費で負担してもらえるポスターなどの印刷代と選挙はがきの郵送費。制度を知らず、届け出が間に合わなくて自己負担になった。差し引けば、100万円足らずで済む。集まった寄付は約300万円。残金をどうするか、五つ星同様の課題が残った。

 選挙を通じて感じたことは敵は安倍政権ではない、ということ。有権者の無関心、政治不信こそ市民選挙が戦う最大の障害だと思った。駅頭で呼びかけても、目に入っていないかのように通り過ぎる人の群れ。政治を必要としない幸せな日々を送っている人なのか。いや世の中の歪(ひず)みを一身に受ける人たちが、そもそも政治に期待していないのだ。

 千葉5区の投票率は49%。残り半分から「社会を変える面白さ」に気がつく人をどれだけ集められるか。市民選挙の課題はここにある、と思った。(ジャーナリスト・山田厚史)

AERA 2017年12月25日号より抜粋