●たとえ小さな自信でも

綾小路:40代で自作のカセットテープを配り歩いたときも同じ気持ちでした。自分の漫談を誰かに聞いてもらいたくて、高速道路のサービスエリアに行って観光バスのバスガイドさんにタダで配ってた。

 周りの人たちからは、「そんなことしたってムダだよ」とずいぶん言われました。でも何事もやってみないと答えは出ない。「できるかできないか」というのは、やってみて初めてわかることだから。

香取:どうしてテープを配ろうと思ったんですか?

綾小路:どこかに自信があったのかもしれない。本にも書いたけど、「必ず自分のことをわかってくれる人がいるはずだ」という気持ちでしたね。

香取:根拠はなくても、心の奥に自信を持つことって、すごく大事だと僕も思います。見えないように閉じ込めてしまうのではなくて、たとえ小さな自信でも「いつでもやれるぞ!」って前に押し出してみる。そうすると、誰かが共感してくれたり、チャンスが巡ってきたりして、そこから応援してくれる人たちと一緒に育てていくというか。

綾小路:だから一度火がつくと、ブワーッとすごい速さで広がっていくんだよね。香取さんもそうだけど、チャレンジを楽しんでいる人の目は子どものようにキラキラしてる。11月の「72時間ホンネテレビ」のときも、3人の目が本当に輝いていて「ああ、これなら大丈夫」って思いましたよ。

香取:72時間テレビは、やることが決まってから考える間もなく動きだしたというのが実際のところで。本番の前日くらいまで、何をやるのかずっと打ち合わせしてましたね。

綾小路:本当におもしろかった。テレビの草創期のような一生懸命さと自由さがあって。「これはテレビが変わるな」と、現場に行って感じました。だけど、不安もあったでしょう?

香取:本当に直前まで、誰が参加してくれるのか決まっていなかったので……。「誰も来てくれなくても仕方がない、3人でやろう!」っていうくらいの覚悟でいました。でも最終的には、たくさんのスタッフや出演者の皆さんが応援に駆けつけてくださって。おかげさまで、やり遂げることができました。

綾小路:すごく伸び伸びとやっていたよね。台本はないけれど、ぜんぶの言葉が人と人の間を巡って、壮大なキャッチボールをしているようだった。何だか、時間が生きているような気がしました。

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