東京都内で今年1月、相続を考えるセミナーが開かれた。遺言の「ゆ」と記された用紙を使い、参加者は自身の遺言内容を考えた(撮影/編集部・山本大輔)
東京都内で今年1月、相続を考えるセミナーが開かれた。遺言の「ゆ」と記された用紙を使い、参加者は自身の遺言内容を考えた(撮影/編集部・山本大輔)
遺言はあまり書かれていない(AERA 2017年12月25日号より)
遺言はあまり書かれていない(AERA 2017年12月25日号より)

 両親にもしものことがあったとき、もめ事を回避するために用意しておきたいのが遺言書。しかし、実際に書いている人は少ないという。そうした現状に専門家は首をかしげる。

【図版】遺言を作成している人の割合はこちら

「子どもが2人以上いて、遺言書を書かないなんて、僕はあり得ないと思う」

 今年1月5日、都内で開かれた相続セミナーで、相続遺言専門行政書士の佐山和弘氏(51)は、40人以上の参加者を前に、そう訴えた。

「遺言書を書かない人の理由は『縁起でもないから』。そういう人は、遺書と遺言書を混同している。遺書は自殺する人が死ぬために書く消極的なメッセージで法的効力はない。法的拘束力がある遺言書は、大切な家族に財産を残してあげたいとか、自分の愛情を分け与える積極的なメッセージ。一緒にしてもらっては困る」

 遺言コンサルタントとして全国で講演をしている佐山氏が、この職業に転じたのは約10年前。それまではすし職人だった。きっかけは、父親の急死に伴う遺産相続で突然、その存在すら知らなかった姉が見つかったことだという。

「本当にびっくりして、いろいろとすったもんだがあった。遺言さえあれば、こんなことにならなかったのにと衝撃を受けた。すしを握っている場合ではないと思い、遺言書を広めるために行政書士になった」

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