「副業・兼業」と言われて最初に思い浮かぶものは?(AERA 2017年12月18日号より)
「副業・兼業」と言われて最初に思い浮かぶものは?(AERA 2017年12月18日号より)

 労働人口の減少で空前の売り手市場。「優秀な人材が採用できない」は、各社に共通の悩みだ。そこに降ってわいた副業解禁。雇う側も働く側も実態はまだ手探り状態だ。

 働き方改革を率先してきたサイボウズが2017年1月、「複業採用」を始めたインパクトは大きかった。「うちの仕事を副業にしてください」という採用だ。人事担当執行役員の中根弓佳さんが説明する。

「これまでもサイボウズの仕事を副業にしたいとエントリーしてこられる方はいました。多様な働き方に取り組み試行錯誤してきて、そういう方を受け入れる態勢が整ったと判断しました」

「受け入れ態勢」の基盤は何か。

「副業や複業って、一緒に働いているチームのメンバーからみると、モヤモヤすることもあるんですよ。『育児があるので休みます』と言われたらモヤモヤしないのに、『ほかの複業がある』と言われると、なんだ、こっちの仕事をせずにって」

 モヤモヤしたら議論すること、チームのメンバーが多様な価値観を理解すること、領域が近い仕事をする場合はオープンにし、承認を得ること。こうした基盤があって初めて、多様な働き方でのチームワークが成立する。マネジャーに求められるスキルも格段に高くなる、と中根さん。

「全員が同じ条件で働いていたときと違い、形式的に当てはめた昇給というわけにはいかない。働き方もコミットも変わってくる。一人一人を見るマネジメントが必要です」

 サイボウズ同様、今年1月から「助っ人採用」の名称で副(複)業採用を始めたのはサイバー・バズだ。これまでに間接部門を含め5人を採用。通常の中途採用の10倍の応募があったという。人事担当の小河原英貴さんが採用の目的をこう説明する。

「高い経験値と専門的なスキルがあっても、この年収をうちで支払うのは無理、というケースがある。そういう人に『助っ人』として入ってもらいたい」

 副業だからこそ、思い切った採用ができるメリットもある。同社の事業はSNSを利用したマーケティング支援。人気インスタグラマーなど「インフルエンサー」と呼ばれる人材を助っ人として採用し、企業アカウントの運用サポートを委託している。話題のハッシュタグや写真の加工の仕方など、突出した専門知識を持っている人材だ。社員ではカバーしきれなかった情報も彼女らがもたらしてくれる。

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