台車に亀裂が見つかった「のぞみ34号」の13号車=12月12日、JR名古屋駅、代表撮影
台車に亀裂が見つかった「のぞみ34号」の13号車=12月12日、JR名古屋駅、代表撮影

 新幹線の安全神話を揺るがす事態が発生した。12月11日、博多発東京行きの新幹線のぞみが走行中に異常音や異臭が確認され、名古屋駅で運転を取りやめた。車両を保有するJR西日本は12日、車体を支える台車に亀裂が見つかったと発表。国土交通省の運輸安全委員会は同日、事故が発生する恐れがあった重大インシデントに新幹線では初めて認定し、調査を開始した。

 経過はこうだ。博多発東京行きの「のぞみ34号」(N700系、16両編成)は11日午後1時33分に博多駅を出発。最初の停車駅「小倉駅」を出る際に、乗務員が焦げたような匂いに気が付いた。それを受け、岡山駅で車両保守担当社員が乗り込み、13、14号車付近で「うなり音」を確認するも、走行に支障はないと判断。その後、京都駅付近で車掌が異臭を感じ、名古屋駅で車両の床下を確認したところ、車体を支える台車に亀裂が入っており、モーターの回転を車輪に伝える「継手」と呼ばれる部分が変色していた。

 もし、あのまま走行していればどうなっていたのか?

 日本大学の綱島均教授(機械工学)はこう話す。

「昨年、東武鉄道が台車枠の亀裂が原因で脱線事故を起こしました。亀裂が入ると車両に均等に加重がかからず、バランスを失い、脱線を引き起こします。在来線なら非常ブレーキで停止できるかもしれないが、高速で走る新幹線はそうはいかない。現在、新幹線は地震対策で車輪がレールから外れないようにする脱線防止ガードの設置を進めていますが、すべての線路に設置されているわけではありません」

 さらに、工学院大学の高木亮教授(電気鉄道システム)はこう話す。

「亀裂に気づかずそのまま走行し、亀裂が広がって台車枠が折れるような事態になっていれば、車両が脱線、転倒し、人的被害も出た可能性も考えられます。たとえばモーターは台車枠についていますが、台車枠が折れてモーターが落ちるようなことになれば、後ろの車両が跳ね上げられ、脱線してしまいます。最初に異変に気付いたのが京都あたりだと、東京まで止まらずに走行していたかもしれません」

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かつて「保守点検にお金と時間をかけていた」JRの現状