多くの場合、副業の会社が残業代を支払うことになる。午前中に副業をしてから本業に出勤すると、労働時間が8時間を超えるのは本業のほうだが、考え方は変わらない。残業代の支払い義務を負うのは副業の会社だ。

「だから、労働契約を結ぶ際は、その労働者が他の会社でも勤務しているかどうか確認すべき、と言われています」(篠原さん)

 例外は、社員が退社後に他社で働くことを知りながら「所定労働時間」を超えて勤務させるケース。この場合は、本業の勤務先が残業代を支払うこともある。所定時間は法定労働時間と似て非なるもので、会社が独自に定めた勤務時間を指す。

「例えば、所定労働時間を7時間としている会社で1時間の残業をさせても割増賃金は生じません。しかし、他社で働くことがわかっていたら、その1時間を割増賃金にしなくてはならない可能性があるのです」

 と篠原さん。ただし、

「現段階では労働時間を通算して残業代が支払われているケースはほとんどない」

 社員がこの仕組みを知らなかったり、組織をまたいだ就労管理が難しかったりするからだ。産業界には、これでは副業の会社の負担が重く普及の妨げになっているという声もある。厚労省は来年度、この仕組みの見直しを検討する予定だ。

次のページ