こうした政策は主に、現政権の官邸で重用されている経済産業省出身の官僚が打ち出しているものです。背景にあるのは、働き方改革の流れの中で、目玉となる政策を途切れることなく、探さなければならないという意識。いわゆる「負の象徴」として旧来の「日本型」なるものを探し出し、それを打破するという形式的な役割を彼らが担っているわけです。

 ただ、それにどれだけ中身があるのでしょうか。僕は経産官僚と何度も話していますが、彼らはこう言うんです。

「巨額の公共投資をするんだったら予算もかかるし、新しい法律もつくらないといけない。しかし、そういうマイナスになることを僕らは一つもやっていないんだから、失敗してもいいじゃないですか」

 斬新さを売り物に、次々「改革」を繰り出していますが、予算も法律も伴わないのだから失敗してもダメ元だ、と。

 そもそも、政府の「働き方改革」は、業務の効率化や残業の削減など、労働時間を短縮するのが柱のはずです。

 日本のいまの労働環境に照らして現実的とは言えない「副業」を推進する前に、ブラック企業を撲滅する、家事・育児に介護も含めた両立を支援するなど、雇用環境を向上させるためにやるべきことは、山積しているのではないでしょうか。(構成/編集部・渡辺豪)

AERA 2017年12月18日号