場所が変われば「ふつう」も変わる。リブロの書店員・野上由人さんがおススメする、松村圭一郎さんの著書『うしろめたさの人類学』は、外の世界の「ふつう」を知ることで、私たちの「ふつう」を問いただすことができる一冊だ。
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10月、NHKの音楽番組「SONGS」に出演した小沢健二は、「人々の文化は町をつくる」と言った。例えば、お金や飲み物が入った自動販売機。外国なら一晩で丸ごとなくなるかもしれないが、日本で自販機を盗む人はまずいない。そういう日本の社会は、要するに、みんなが持っている文化がつくっている、と。
ある町では「ふつう」のことが“外から目線”で見ると「おかしい」。著者は、文化人類学者としてエチオピアのフィールドワークで得た知見を旅行記のように綴つづり、まずはエチオピアの「ふつう」に率直に驚く。そして日本の、私たちの「ふつう」を問い直す。
人類学なんて私の生活に関係ないと思っている多くの人に薦めたい。これは「私の生活」に“外から目線”を導入して、変革の可能性を信じるための、知的な準備運動。やさしく頭をほぐしてくれる。
※AERA 2017年12月11日号