もっとも学会は軍事研究とは一線を画すが、EMPは核爆発でしか起こせないのだろうか。

「米国議会は、98年に米海軍からトランジスタラジオを作る程度の技術で、小さな段ボール箱大の高周波爆弾の作製報告を受けています。威力は超広範囲から局地と制御可能で、爆発させれば一帯のソフトウェアやデータは壊滅的な被害を受ける。しかし攻撃した側も同様に影響を受けて生活に支障をきたし、パソコンや携帯電話も使えなくなるので、可能性は低いのではないでしょうか」(今泉氏)

 そもそも、軍事行動の空間は、陸海空を第1~第3と想定し、第4が宇宙、そして第5がサイバー空間と進化した。今やミサイルの阻止や無人機を落とすためには、敵のコンピューターを壊すことが必要だ。見えない世界での戦いが進化するほど、HEMP攻撃の効果は高まる。しかし、高高度での核爆発という極めて目立つ行動を起こせば、報復は必至だ。米軍基地を巻き込むような攻撃を北朝鮮が実行する可能性は低いとみられている。それだけに、最も怖いのはサイバーテロリストによる乗っ取り、もしくは誤作動を発生させることだろう。鬼塚氏は言う。

「帰属国不明で拠点を変えつつ活動するテロリストグループが相手の場合は、報復する攻撃目標の特定も困難になり、指揮統制や兵器システムの電子機器が破壊されれば有効な報復もできない。いずれにしても、HEMP攻撃を現実の脅威として捉え、関係諸国と連携を深めていくのが急務です」

(編集部・大平誠)

AERA 2017年12月11日号より抜粋