北朝鮮のミサイル発射でJアラートが鳴ったとき、国も自治体も適切に誘導できなかったし、住民のみなさんもどこに避難していいかすらわからなかった。例えばフィンランドでは小さな家でもシェルターがあって、第2次世界大戦でソ連から爆撃を受けたときも死傷者の数がすごく少なかったんです。人口60万のヘルシンキでは、それに加えて働きに来ている昼間人口も合わせて全員が避難できるだけのシェルターを備えていて、場所の周知も徹底しています」

 防空壕など既存の避難施設の再確認や改修、新たなシェルター構築など、将来を見据えて取り組むべき課題は多い。

 降ってわいたようなHEMP攻撃の脅威だが、存在や研究自体は新しいものではない。日商エレクトロニクスのサイバー対策専任者で、米国の情報機関に勤務していた経験もある今泉晶吉氏が解説する。

「1960年代に、米空軍がニューメキシコ州カートランド基地でEMPの研究をしていたことが75年に明らかになりました。ネバダ州で行われた初期実験で150キロ離れた地点のブレーカーを落としたり、パソコンのデータを消去するような攻撃に利用できることがわかるなど研究が進んでいます。75年よりパルステクノロジーの国際学会も毎年2回開かれており、米国、ロシア、中国などの専門家が入り乱れて研究発表をして盛り上がっています」

次のページ