実はこれらの企業には共通点がある。GMOインターネット以外は米国IT企業なのだ。

 現状の日米関係はかつてなく良好で、対立する雰囲気はない。だが、仮に関係がぎくしゃくして敵対しようものなら、日本のあらゆる情報はこうしたIT企業を経由して米国に渡る。というより、すでにすべて吸い取られている、と考えるのが妥当だ。情報武装において日本は“丸裸の赤子”同然なのだ。

 なぜこんな事態に陥っているのか。それは日本独自のIT技術が育たなかったためだ。これは、平時は気にならなくても、いざという時は大変な問題になる。この問題について、サイバーセキュリティーの研究などを行うFFRIの鵜飼裕司社長はこう話していた。

「私が米国企業に勤めていた時、日本でサイバー攻撃に関するある脅威が発生した。しかし、日本には基礎技術がないので、どうにもできない。私の勤めていた会社にはその脅威に対抗する技術があったので、『何とか助けられないか』と提案したが、『日本市場は米国の10分の1しかないので無理だ』とすげなく断られた。この時、何かあった時のためにも、自分たちで対処できる技術を持たなければならないと痛感した」

 ただ、日本に技術力がないわけではない。実は、かつては米国よりも進んでいた。

 例えば、日の丸OS「TRON」。開発がスタートしたのは1984年でウィンドウズの先を行く技術だった。複雑な経緯から広く普及するに及ばなかったが、このような技術が国内に定着していれば、日本のIT産業やインターネットの状況は今とは全く異なる風景になっていたかもしれない。要はサイバー攻撃の脅威は変わらないとしても、“情報武装”はもっとましなものになり、日本の機密情報や個人情報がこれほどあられもなく扱われることはなかったのではないか、ということだ。(電経新聞編集長・北島圭)

AERA 2017年12月11日号より抜粋