守る側は空間全体を網羅しなければならない。ゴールを決められれば失点するし、守り抜いたとしても得点にはならない。そういう意味で、セキュリティーの技術者はいや応なく神経戦を強いられる。まして一般の個人が自力でサイバー攻撃から身を守るなど無理な話で、狙われれば必ずやられる。

 ではどう身を守るか。一つはクレジットカード番号をはじめ、住所や電話番号、私的な写真など機密情報、個人情報をむやみにネットに上げないことだ。ブラックハッカーはかすかな個人情報の臭気をかぎわけ、仕掛けてくる。eコマースなどの利用で個人情報を出さざるを得ない場合も、用が済んだら、すぐにそれらの情報をパソコンやスマホから削除する。ブラックハッカーは「パソコンやスマホに残ったままの情報を盗む」ためだ。端末に情報がなければ盗みようがなく、被害は抑えられる。

 また、ウイルス対策ソフトも有効だ。検知率10%台というものもあり、不要論も聞かれるのだが、最悪の被害をもたらす流行のウイルスはシャットアウトできる。

 監視社会に詳しい富山大学の小倉利丸名誉教授はこう訴える。

「勤め先の企業の対策も家庭向けの参考になる。大手企業が個人情報を漏洩する事案も続いている。国家にも情報が渡っている今、個々人が、意識やライフスタイルを見直すぐらい、注意すべき状況です」

(電経新聞編集長・北島圭)

AERA 2017年12月11日号より抜粋