石井さんによれば、そもそも学校が行うのは「指導」であって「支援」ではない。だが、いまの中高生に必要なのは支援。それも対処型の支援から予防型の支援に変えなくてはいけない。

「スクールカウンセラーに予約を取る子は訴えが明確ですが、漠然とした不安やつらさを抱える子たちは自分でも何を訴えたいのかがわからない。コーチング用語で不安の塊を『チャンク』と言いますが、僕らは子どもたちと話しながらその塊を砕き、問題を分解して解決する。専門性を持つ第三の大人がかかわるチャンネルをどう増やすかが重要なのです」(石井さん)

第一の居場所である家庭は安心できるところなのか。

 都内の小中一貫塾・小金井学習センターで30年間子どもを支援し、現在は通信制高校講師を務める口山衣江さん(74)は、男子中学生の言葉が忘れられない。

「うちのお父さん、勉強でも何でも富士山に登れって言うんだ。高尾山なら登れるんだけど」

 高尾山だって599メートルもある。親からの過度な期待につぶされそうになっていた。

「目標設定をわが子に任せるのは、子どもの少ない時代の親にとっては難しいことかもしれません。だからこそ親同士で学び合ってほしい」(口山さん)

 冒頭の女性は通いたい大学が見つかったのを機に「リアル」に戻った。母親(45)は、

「ママ友に助けを求めたら、必要な支援先を教えられたし、いまはほっとけとかアドバイスももらった。迷惑かけてOKっていう空気がありがたかった」

 まさに依存先を増やしたことが自立につながっていた。

 女性は、座間事件を受けて国がサイトの削除や書き込み制限などネットを規制する方向に向かっていることを憂う。

「ネットはいずれ卒業する。だから奪わないでほしい。そこにいる8割は、いい人なんだから」

(ライター・島沢優子)

AERA 2017年12月4日号より抜粋