もう一つは法曹界の第一線で活躍するOB・OGとの交流促進です。激務の合間に学生にきめ細やかな指導をしてくれていますが、都心の職場から多摩キャンパスを訪ねるのは大変です。この現状を改善したいのです。

 三つめは、法科大学院進学時の流出防止です。連日深夜まで司法試験学習に打ち込む学生の多くは、多摩キャンパス近隣に住んでいます。このため、多くの学生が大学院進学に伴い転居を余儀なくされるのですが、その際、相当な数の学生が他校に転出してしまう。本校法科大学院修了生の17年の司法試験合格者は119人ですが、10月の合格祝賀会の招待者数(法学部に在籍履歴のある人を含む)は196人。つまり、他校の法科大学院に約80人も転出していることになります。転出理由はさまざまですが、まずは「引っ越しを機に」という要因を排するのが有効だと考えています。

 移転はしても、決して多摩キャンパスをないがしろにする気はありません。留学生用の寮を学内に設置し、本格的なグローバルキャンパスを目指す計画もあります。ただ、公認会計士や国家公務員の総合職の資格試験合格率アップを図るうえでも、都心に近いほうが有利な面は否めません。「23区の定員抑制」を考慮せざるを得ない状況ですが、他の複数学部の都心移転は今後も模索していきます。

 法学部移転には、多摩キャンパス全体の求心力低下を懸念する声も出ています。対策として法学部に比肩するレベルの高い新学部の設置を検討しています。定員を絞った形で国際系の学部の募集を数年内に案内できるようにしたいと考えています。(談)(編集部・渡辺豪)

AERA 2017年11月27日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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