そんな困難な状況をあらゆる人脈や知恵を用いてひっくり返したゴア氏だが、今年6月、自国のトランプ大統領がパリ協定離脱を表明した。当然「トランプ大統領にパリ協定にとどまるよう説得した」と言う。だが、「正気になってくれるかと思ったけれどダメでした。でも、合法的にアメリカがパリ協定から離脱できるのは次の大統領選挙の後、2020年のこと。新しく大統領になった人が30日前に通知を出せば、またパリ協定に参加できます」

 トランプ大統領再選の可能性はないというわけか。さらに、こう続けた。

「それよりもっと重要なのは、カリフォルニア州やニューヨーク州といった大きな州をはじめ、何百という都市、多くの企業がみんなパリ協定を守ると言っているということです。トランプ大統領がなんと言おうと影響はないと思います」

 あくまで楽観的なのは、人間の力を信じているから。

「傷つくことはありますが、私にはいつも希望があります」

(ライター・坂口さゆり)

AERA 2017年11月27日号