「これまでもテクノロジーの進歩と社会の変化に伴って、死ぬことの意味や重要性は変化してきました」

 多産多死だった時代には、高齢者の存在がより大切にされた。理由のひとつに、高齢者がコミュニティーの中で知識を保持して伝えていく役割があった。しかし、この役割はすでにテクノロジーが代替しつつある。今後は、社会に役立つ存在としてロボットなどのテクノロジーの役割がさらに大きくなっていくだろう。

「今の社会では、人の価値は『役に立つ』かどうかで判断されることが多い。それに対してテクノロジーが『役立つ』役割を負うと、人の価値を改めて考え直す必要が出てきます。こうなったときに、人は無条件にただ生きているだけで価値があると見なさなければならないと、私は考えています」(久木田さん)

 テクノロジーの進化で死への恐怖だけではなく、死そのものがなくなるかもしれない。未来では、人の生きる価値をどこに見いだすかが、より重要になるだろう。(編集部・長倉克枝)

AERA 2017年11月20日号より抜粋