「課題は、その人の脳の情報をいかに読み出すか。人の大脳新皮質には約140億個の神経細胞がありますが、これらすべての情報を取り出す技術はまだありません」

 と、山川さん。もっとも、脳から直接ではなくライフログ(生活の記録)のように、その人の行動や表情など外からとらえられる情報を集めることは今でも可能だ。このデータから、その人の脳の特徴を推測して再構成することはできるようになるだろう。

 こうして、いずれ体の衰えばかりではなく、死によって心が失われることさえ克服できるのかもしれない。それが実現すれば、「人の価値そのものが変わっていく」と指摘するのは、哲学者で名古屋大学准教授の久木田水生さんだ。

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