「末期がん患者さんに会いに行っても、麻酔が効いて眠ってしまい、じっくりお話を聞けないケースもある。そのため、1回だけ5~10分お話を聞かせてもらっただけで、お会いできなくなってしまう患者さんも多い」(池内理事)という。

 そもそも、宗教に対する誤解や不信感で、宗教者を拒む患者も少なくない。そのため、日本臨床宗教師会では公共性の高い職種であることを証明するべく、来年3月から資格認定制度を導入する予定だ。

 いまだ認知度は決して高くないが、「一部では常勤の臨床宗教師を雇用する医療機関も現れている」(井川住職)。医療行為のみならず、患者の心のケアまで要求されてきた医師や看護師の負担を軽減するのも狙いだ。

 実は、終末医療の現場では「患者の苦しみに心を痛める医療関係者のケアもお願いしていきたい」(訪問診療クリニック関係者)という声も上がっている。終末期の患者と向き合う緩和ケア病棟や在宅医療では、特に看護師が患者と家族のように密な関係を築くことも少なくない。その患者との死別が精神的負担となることも多いのだ。

 臨床宗教師が求められる現場は、今後ますます増えていきそうだ。(ジャーナリスト・田茂井治)

AERA 2017年11月20日号