東京都町田市にある、緑豊かな霊園内で一般墓に交じって散在する「桜葬」の墓所を見学する人たち。春には満開の桜の下、桜葬メモリアル(合同祭祀)が開かれる(撮影/関口達朗)
東京都町田市にある、緑豊かな霊園内で一般墓に交じって散在する「桜葬」の墓所を見学する人たち。春には満開の桜の下、桜葬メモリアル(合同祭祀)が開かれる(撮影/関口達朗)
桜葬の共同銘板。存命の人は赤字、亡くなった人は黒字で刻銘されている(撮影/関口達朗)
桜葬の共同銘板。存命の人は赤字、亡くなった人は黒字で刻銘されている(撮影/関口達朗)

 未婚だったり、結婚していても子どもがいなかったり……。世話をしてくれる人がいない人にとって将来は不安だ。知っておけばきっと気が楽になる、こんなサービスもある。

「ほら、向こうに横浜ランドマークタワーが見えますよ」

 ついさっきまでこわばっていた表情が、みるみるやわらいでいく。秋晴れの澄んだ空の下、緑濃い丘陵地を歩く人々は安堵感に包まれているように見えた。
 
 11月3日、認定NPO法人「エンディングセンター」(東京都町田市)が主催する「桜葬」の見学会に参加した。集まったのは中高年を中心に6人。母親に付き添ってきた30代の男性を除くと全員女性だ。

事前説明で井上治代理事長はこう強調した。

「遺骨は自分で歩いてお墓に入れないんです」

 5年ごとの国勢調査では2010年以降、最も多い家族の形態は「単身世帯」で、3割を超える。孤独死への不安をやわらげ、「よりよい死と葬送」を実現したい、という井上理事長のこだわりを形にしたのが桜葬だ。

 墓所に外柵や墓石を設けず、遺骨を土中に埋めて樹木を墓標とする樹木葬。センターは、多くの日本人が親しみを感じる桜をシンボルツリーに選んだ。使用料を契約時に支払い、生前に5千円の年会費を納めれば、死後の管理費などの負担や継承者は不要。単身者や子どもがいない人のニーズにも応えている。

「継承者がいなくても入れるシステム、ほんとに増えてほしいですね」

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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