私自身、兵庫の北部出身の、大学で京都に来た「よそさん」だから痛感しているが、根っからの京都人にはどうあがいても敵わないなとは思う。また、「京都人」というくくりにも、洛中、洛外でいろいろあるらしいのだが、それはひとまずおいておく。

「京男」アンケート、断トツ1位は佐々木蔵之介さんだ。実は私も「京男」で一番に思い浮かべたのは蔵之介さんだった。蔵之介さんの「京男」イメージには背景がある。洛中で唯一残る造り酒屋「佐々木酒造」の息子で、跡を継ぐために東京農業大学に入学し、神戸大学農学部に編入してバイオテクノロジーを研究していたエリートだ。しかし在学中に演劇に目覚め、そのまま役者の道に進む。佐々木酒造の社長は弟さんだ。

 また蔵之介さんがブレークしたドラマNHK朝ドラ「オードリー」は京都の太秦が舞台だ。「洛中」「酒屋の跡取り」「京都が舞台のドラマ」という京都好きをくすぐるキーワードがちりばめられている。しかも独身で、スキャンダルもなく、そこらへんも「余裕」を感じさせる。

 2位の北大路欣也さんの父親は、東映時代劇の大スターで、「御大」と呼ばれた市川右太衛門。北大路さんも25歳でNHK大河ドラマ「竜馬がゆく」の主役を務めた、堂々たる有名俳優だが、近年はソフトバンクのCMの犬の声を演じたりして、若い層にも親しみを持たせた。

 3位の近藤正臣さんは、母は元祇園の芸妓で、曾祖父は清水寺の寺侍で、幕末に西郷隆盛と共に入水した月照に仕えていた近藤正慎だ。月照の行方を吐くようにと拷問されるが、最後まで屈せず自ら舌を噛み切って亡くなった。その子孫が営む「舌切茶屋」は現在も清水寺境内にある。

 昔、片岡鶴太郎さんが「コンドーです」という物真似をしていたのが印象的で、コミカルなイメージもある。

 と、やっぱりランキングを見ても、皆、その人自身の仕事の功績だけではなく、「京都」とつながる背景がある人が多い。そしてそこに単なるバックボーンではなく、余裕が感じられるのだ。ちょっとおちゃめなことをしても、カッコ悪くならない。むしろ、そこで好感度が増す。

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