小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
男女平等ランキングがG7で最下位というのも、さもありなん… (c)朝日新聞社
男女平等ランキングがG7で最下位というのも、さもありなん… (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【メディアが熱狂 イヴァンカさんの写真はこちら】

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 ファミリービジネス大成功の感のあるアメリカ大統領来日フィーバー。イヴァンカさんに憧れる女性は彼女の名を冠したブランドの服を買いに走り、トランプ大統領は、「日本はアメリカから大量の武器を買って北朝鮮のミサイルを迎撃すべし、そうすればアメリカは多くの雇用を、日本は安全を手に入れられるだろう」と大きな商談をまとめて満足げです。

 イヴァンカさんやトランプ夫妻がどこのレストランで何を食べたとか、ハローと言ったとかサンキューと言ったとか細かすぎる情報が乱れ飛んだ来日中。女性の活躍を訴え、セクハラはあってはならないと述べたイヴァンカさんのスピーチに「美人でオシャレで知的で素敵!」と夢中になった人もいれば、「それは自分のパパに言うべき」「イヴァンカのブランドの製品を作っている女性たちの権利はどうなってる」と突っ込んだ人も(私はこっち)。

 トランプ大統領は以前、演説でイヴァンカさんのパパっ子ぶりを自慢げに語り、「みんなイヴァンカが大好きなんだ。“彼女を見れば、トランプが悪い奴であるはずがないとわかるさ”ってね」と娘が自らの印象アップに貢献していることをアピールしました。今回の来日では、まさにそれが最大限に功を奏したようです。

 今回、イヴァンカさんとメラニアさんのために、警察は女性だけの警備隊を結成。ワシントン・ポストはその警備能力に疑問を呈し「ある種の性差別」と指摘しています。そんな折、世界経済フォーラムの男女平等ランキングが発表され、日本は昨年よりさらに三つ順位を下げて、144カ国中堂々の114位。G7では最下位でした。

 容姿端麗でファッショナブルな女性に弱いのは、女性蔑視の裏返し。外見至上主義の表れでもあります。お姫様に夢中のメディアの熱狂ぶりに、さもありなんと妙な納得感すらあったのでした。

AERA 2017年11月20日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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