役人言葉をちりばめた発言だが、キーワードは「高次元の対応」だろう。税金を払った人の利益に沿って使い道を勘案するが、分かりにくい使われ方でもそれは「高次元の対応」と言わんばかりの発言である。

 年末の税制改正で出国税が決まれば、準備期間に1年がかかり実施は19年4月になるという。この年にはラグビーワールドカップが日本で行われ、翌年は東京五輪・パラリンピックが控えている。訪日外国人を増やす絶好の機会だ。

 観光庁の17年度予算は210億円ほどしかない。出国税を導入すればその2倍のカネが生まれる。関連する業界は大喜びするだろう。海外で日本を売り込むことができるのはどこか。世界にネットワークを張り巡らす大手広告会社しかない。東京五輪と言えば誰もが思い描くのは電通だろう。

 電通など大手広告会社は広告・広報にとどまらず、メディア対策や情報戦略に事業を広げている。東京五輪の誘致でもシンガポールのコンサルタント会社について招致委員会の問い合わせに答えるなど舞台裏で汗をかいた。選挙情勢やメディアの報道分析など情報戦略でも首相官邸にとって大手広告会社の役割は重みを増している。

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