高齢者だけでなく、地元の大学生もこのゲームに取り組んだ。

「終末期の医療についての『本人の意思』は、声の大きな家族の意向で変わることも多い。選択を迫られてからではなく、元気なうちから将来の意思決定を考える機会をつくり、家族や地域で話す機会をつくっていく必要がある。満足のいく終末期の医療を受けるには、法律や制度を整えるだけではなく、市民レベルの意識も高めていく必要があるのではないか」(蔵本室長)

 政府は08年、医師が延命治療などの相談を受ければ診療報酬を加算する仕組みを導入したが、「高齢者は早く死ねということか」といった強い反発を受け、10年4月に廃止。今年4月には京都市が延命治療などへの意思を確認する「事前指示書」を3万部作って配布したが、「国の医療費抑制に同調しているのでは」といった反発が出た。市民レベルの意識が高まっていれば反応は違ったかもしれない。

 誰にでも、いつかは訪れる死。その「いつか」を考えることが、「尊厳ある死」への準備になる。(編集部・澤田晃宏)

AERA 2017年11月20日号