恩田:哲学の勉強もしていらっしゃると伺いました。

ブ:まさに博士論文を仕上げたところです。私は哲学の中でも音楽と関わる美学に興味があり、勉強していけば私の演奏にも役に立つかもしれないと思っています。音楽を演奏するとはどういうことか、その中で自分は何者であるか、コンサートはどういうものであるかということを研究してきました。趣味はと質問されたら、「ピアノ、哲学、オルガン、車の運転」と答えるでしょう。オルガンには幼い頃から教会に通って親しみましたし、4歳の時から自分でも習い始めました。カトリックの家庭に育ち、幼い頃から教会の中で宗教曲を聴いたことはバッハの解釈をする時などに役立っています。車の運転も大好きで、欧州のツアーでは自分でハンドルを握って移動することもあります。わりとスピード狂かもしれません(笑)。

恩田:今は世界中をまわっていますが、どんなことに喜びを感じていらっしゃいますか?
ブ:コンサートの舞台に出ていって、たくさんのお客様の前で演奏することですね。自分は一人ではないのだ、こんなにたくさんの方々と音楽の素晴らしさを分かち合えるのだと感じることです。私は仮に録音がなくなっても生きていくことはできます。でも、コンサートのない人生は考えられません。

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