この重力波の検出可能性を説得力を持って主張できたのは、今回ノーベル賞を受けたマサチューセッツ工科大学(MIT)のレイナー・ワイスだ。

 32年にドイツで生まれたワイスは、米国で育ち、名門MITで物理を学んだが、ピアニストに恋い焦がれ、何もかも投げ出した末に捨てられた。中退した大学で技術者として働くうち、心優しい教授に拾われて復学、博士号まで取った。プリンストン大学勤務を経て、64年からは母校で教えることになった。

 ほどなくしてワイスは一般相対性理論を教える義務を負う。だが「私はほとんど知らず、ウェーバーの重力波実験の説明もできなかった」と言い出す始末。それでも学生は「重力波を知りたい」という。やむなく重力波の測定方法を自分なりに考えた。ノーベル賞決定後のインタビューで、ワイスはこう答えている。

「空間に重い物体を二つ浮かべて置き、その間の距離変化を見ていれば、重力波が来ているかどうか分かると考えた。学生に与えた練習問題でした」

 これが後に重力波を検出する装置の「根幹」となる。

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