「マスメディア」として広く認知されるようになったら、こういう尖り方や、夜中のお色気系番組は減らしていくつもりです。でもいまは、テレビに「飽きた」とか「わざわざ見たいとは思わない」という人たちに独自の姿勢を示して、視聴者を集める時期だと考えています。

●やりながら模索する

 藤田社長はAbemaTV開局当時から、「ネット発のマスメディアを目指す」と公言している。自身の「マスメディア」の定義は、「1週間の利用者数1千万人」。社会性や信頼性を確保するため、力を入れている分野の一つが「報道」だ。テレビ朝日報道局と協力しながら、震災や事件など突発的なニュースにも対応する。

 一方で、総選挙公示直前の10月8日には、幻冬舎の見城徹社長がホスト役を務めるトーク番組「徹の部屋」に安倍晋三首相がゲスト出演。見城氏は「僕はずっと安倍さんのファン」とその政策を絶賛し、「メディアは報道すべきことを報道しない」と既存メディアを批判した。

──この番組の放送後、マスメディアとしての「公平性」を問う議論が巻き起こりました。

 批判精神も大事だし、権力の監視も必要だとは思います。でも、僕も同じリーダーとして、文句ばかり言われたらつらいだろうな、と。そういう問題意識で安倍総理の良いところを伝えました。

──権力を監視し批判するのはメディアの役割の一つです。

 僕は、これでバランスがとれたと感じています。嫌な人は見ないでしょうし。中立や公平を意識しすぎると全てが討論になりますが、闘う必要がない議題だってあるはずです。正直、あそこまでやるとは思わなかったですけど。

──既存メディアに取って代わろうというわけではない、と。

 そうですね。ただマスメディアを目指してはいるので、今後は中立公平についてももっと考えないといけないでしょう。教育番組もやりたい。今後のメディアのあるべき姿なんて見通せている人はいないんじゃないですか。いまは楽しいというよりプレッシャーのほうが大きいですが、僕自身もやりながら模索していきたいと思っています。

(構成/編集部・竹下郁子)

AERA 2017年11月13日号