周囲に気を使うのには、理由がある。

「私たちは高校に入る前にスマホが普及した世代で、高校時代にクラスのグループLINEがありました。誰かを退会させるさせないという話もあって、その時、SNSとの付き合い方を真剣に考えたんです。今はみんな、同時進行で多くのグループに所属しているので、多かれ少なかれ失敗したり苦労したり、HP(ヒットポイント)を削られた経験があると思う。だから、平和なほうへ向かうんです」

『「つくす」若者が「つくる」新しい社会』の著書がある、アサツー ディ・ケイ「ADK若者プロジェクト」リーダーの藤本耕平さんは、いまの若者たちを、「和を考え、全員のために尽くせる世代」と指摘する。

 実際、今回の取材中、多くの学生が「人が嫌な思いをしないように」「相手がどう受け止めるか」を考えると発言した。

「自己が確立しているのも大きな特徴です。1992年以降、国や教育機関が理想像を掲げなくなり、『世界に一つだけの花』の歌詞が象徴するような個性尊重教育が広がっていった。『正解は自分の中にある』という考えが根づいている」(藤本さん)

 デジタルネイティブとして、日々膨大な情報に触れているから、自分で取捨選択し、価値判断を完結させられる。

 かつて、安室奈美恵に憧れてアムラーが登場したように、若者たちには共有するアイコンや認識があった。ところが、いまは「同じレベル感」は存在しない。みなが個として、違う方向を向いている。

「自分は自分で、他人は他人という認識が根底にあるから、一歩引き、本気でぶつかり合うことも少ないのでしょう」(同)

 そのせいか、人目に触れるSNS上の言い争いに、不快感を示す人も多かった。亜細亜大2年の男子(19)は、グループLINEは基本、読み飛ばすタイプだ。が、そこで言い合いが起こると、ストレスを感じる。

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