タツオ:大きな声じゃなく、静かに「許可局員です」って言うメンタリティーがお金を払い、時間を押さえ、イベントに足を運ぶというメンタリティーと直結しているから、イベントにお客さんが来るんじゃないかな。

鹿島:あとラジオとSNSって親和性がとても高くて、僕らが自主でやってる時から、ラジオ好きに見つかり、その情報がSNSで広がって、共有され、登録者も増えていく。そのからくりの面白さにも気づきましたね。

●大切な場所

タツオ:聴いてる人に語りかけない、という演出は最初から意図していました。それは喫茶店に入ったら隣のテーブルで、興味深い話をしていたぐらいの感じで、聴いてもらえればという思いからです。

鹿島:実際「喫茶室ルノアール」で収録してました。

マキタ:結果論でもあるんだけど、3人の関係性が大事で、題材選びや切り口で、それぞれの得意分野が生きた。例えば、おたくのプロレスならこうなの、アニメならこんな見立てができるとか、音楽だったらこうだよとか、相互が乗り入れるような転がし方が生まれました。

タツオ:ラジオって3人の関係性のごまかしがきかない。むしろ関係性の蓄積が、その時のフリートークに出るので、利害以外の絆のある3人でやっているのが、嘘が出ないぶんいいのかなと思います。

マキタ:あと敬称を略したことですね。これは結構、勇気がいります。

鹿島:僕らは芸能界の一番外にいたから、「たけしさん」と言ってるほうが、くすぐったい気がしてたんですよ。それよりは「昨日ビートたけし見た?」というノリを大事にしました。まあ芸人の自覚としてどうなんだという話はありましたが……。

マキタ:語る内容も微妙で、ちょっと評論めいたこともやるから、「たけしさん」と言ってると、ちょっとねじ曲がっちゃうじゃないですか。だから、そこは律して敬称略でいきましょう、と決めましたね。ただ今は地上波になり、自分たちのポジション、位置が変わってもいるので、さすがに敬称をちゃんと付けますけどね。ポッドキャスト時代だからこそできたことです。

鹿島:変わった点といえばそこでしょうね。そこは僕ら3人の仕事の変化で変わったけど、他は変わってないですね。

タツオ:僕は、番組に来ると、それぞれみんなが仕事の質も変わっていくなか、地元に帰って友達に会っている感じがします。みんなそれぞれ働いているフィールドが違うから。リスナーもこの地元を応援してくれているという感じがしています。

●そのまま地上波へ

タツオ:リスナーもですけど、スタッフにも愛されてる番組です。そもそも長田(ゆきえ)プロデューサーは、ずっと企画をTBSに出し続けた人。「自主制作のラジオをそのまま地上波へ」って、勇気のいることだと思うんです。さらに喫茶店で収録してたときと同じ環境も整えてくれてた。

鹿島:今、わざとBGMで流してます。喫茶店のしゃべり声を。

マキタ:番組のフォーマットは変えずに、「そのままでいいですよ」って。

タツオ:僕らに自由を残してくれたんですよ。

鹿島:そこまで理解してくれた人に出会えたのも奇跡です。2013年に地上波になったんですけど、実は、それがなかったら、もうやめようかという話になってたんですよ。お互いのスケジュール調整が、いよいよ限界にきて……そのタイミングでTBSラジオの話がきて、公式な仕事になりました。このタイミングもまさに奇跡でした!

(構成/ライター・本山謙二)

AERA 2017年10月30日号