同じくジャンプを武器にする中国の金博洋(ジンボーヤン、20))は、4回転の中で最も得点が高いルッツが得意で質もいい。「SPで2本、FSで4本」の4回転の高い成功率を武器に、2年連続で世界選手権の銅メダルを手にした。

 4回転の本数ではなく、総合力で挑むのがベテラン2人。スペインのハビエル・フェルナンデス(26)とカナダのパトリック・チャン(26)だ。

 フェルナンデスは4回転こそ2種類だが、プログラムの随所に忍ばせたステップ、曲のテーマを体現する演技力などで、得点を積み上げる。チャンは質の良いスケーティングがベースの表現力が秀逸で、観客は彼の世界観に引き込まれる。4回転をFSで2、3本に抑えても、上位に行ける総合力がある。

 6人の戦いの雌雄を決するのは、4回転の本数ではなく質と成功率だ。

 4回転は誰にとってもハイリスク・ハイリターンな大技。例えば羽生が武器とする4回転ループは、最高の質で成功すれば15点、転倒すれば8点、90度以上の回転不足で転倒すれば2点。どの4回転も同様に得点幅が大きく、本数より質や成功率で順位が入れ替わる。

 4年前のソチ五輪シーズン。GP2戦の羽生はともにチャンに次ぐ2位だったが、ファイナルで初優勝。そのままの勢いで五輪の頂点に立った。GPシリーズでの戦いぶりは五輪への伏線。10月20日のロシア杯から、真剣勝負がスタートする。(ライター・野口美恵)

週刊朝日 2017年10月23日号