「散歩で前を通っても人けがなく無人と思っていた」

 別の男性も、

「ここで暮らして2年になるが、彼を一度も見たことがない」

 と言い、警察に見せられた、容疑者の交際相手のアジア系女性(62)の顔写真にも見覚えがなかった。この男性は事件後に1人だけ、容疑者と面識がある住民を見つけた。自治会が規制するフェンスを庭の外周に設置しようとした容疑者と「口論になった」と話した。男性は言う。

「景観を気に入って高台を選んだはずなのに、よほど視界を遮りたい理由があったのだろう」

 同じく近所で暮らすミシェル・バードさんも言う。

「余生を静かに過ごそうと、ここに家を買ったのだろう。大量の銃を買い集めていたなんて、彼の身に何が起きたのか」

 地元でもう一つ、容疑者が出入りしていた場所がカジノだ。大型カジノが少なくとも3店あり、朝も夜も、高齢者がビール瓶片手にスロットマシンなどに興じている。従業員によれば容疑者は数カ月前までよく来ていて、ニューヨーク・タイムズは「最近も2万ドルの大当たりを出していた」と報じている。

 フロリダ州在住の弟ら親族が米メディアに語ったところによると、容疑者は大学に通った後、会社勤めを経て不動産経営を始めた。パイロットの免許を持ち、複数の不動産と共に小型飛行機も所有していた。クルーズ旅行に出たりホテルで暮らしたり、裕福だったという。

 離婚歴は2回。その後カジノで接客担当だった女性と知り合い交際を開始。一緒にギャンブルを楽しむようになったという。米メディアによると、容疑者は犯行前、女性が滞在するフィリピンの口座に10万ドル(約1100万円)を送金していた。

 ご機嫌で裕福でギャンブル好き──。容疑者を知る人の言葉から浮かび上がる人物像と事件を結ぶものは、まだ何一つ見つかっていない。(朝日新聞記者・金成隆一)

AERA 2017年10月16日号